"怨霊史観"の原点
著者は哲学者として名を成していながら、歴史上の謎に次々と挑戦する変り種。"怨霊史観"の提唱者として名高い。本書はその歴史観を完成させる前の作品で、代表作「隠された十字架」、「水底の歌」以前に発表された論文を纏めたもの。著者自身、この時点の思想は未完成と語っており、それだけ荒削りな部分も多いが、逆にその分勢いと情熱に溢れている。
基本的には記紀等の神話の研究を土台にしているが、メインとなる主張は出雲神話が出雲に元々伝わる神話ではなく、出雲は「神々の流竄」の場所であったという点である。つまり、神々が大和あるいは九州から出雲に追い出されたという主張である。そして、記紀の神代巻は「神々の流竄」を伴う宗教革命であり、この革命の推進役は藤原不比等だったという興味深い問題提起をする。この論点のうち、記紀の実質的作成者が不比等であった事は今や定説と言っても良いだろう。
この他、前半では「ヤマタノオロチ=三輪山」説、「イナバのシロウサギ=宗像神」説等、相変わらずユニークな論を展開してくれる。本書の発想がその後"怨霊史観"に結び付き、冒頭の2つの画期的代表作を産み出すキッカケとなった。著者の古代史研究の原点となった活力溢れる良書。
推理小説よりも面白い
<推理小説よりも面白い> というのが読後の率直な感想です。古事記の真の著者は誰なのか? 古事記と日本書紀の記述内容に食い違いがあるは何故なのか? 日本の正史である日本書紀に古事記の存在そのものが無視されたかの ように一切の記述がないのは何故なのか? 学説的な正しさを云々する素養を私は持ち合わせていませんが、 筆者の疑問・謎を追いかけていく迫力に惹き込まれて、 一気に読んでしまいました。 面白かった!
梅原ワールド!
ヤマタノオロチや、因幡の白ウサギといった、我々にはなじみ深い古事記のの一説に対して、独自の解釈を試みている。あとがきの中で、著者自身その説の「誤り」を認めてはいるが、説のユニークさとその検証の説得力から、ついつい引き込まれてしまった。また、タイトルにもなっている「出雲神」の 流竄の話や、古事記・日本書紀の真の作者を解き明かす話の中で展開される、著者のダイナミックかつ繊細な自説には、古代へのロマンを膨らませてくれる楽しさが満ちあふれていた。
集英社
飛鳥とは何か (集英社文庫) 水底の歌―柿本人麿論 (上) (新潮文庫) 水底の歌―柿本人麿論 (下) (新潮文庫) 隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫) 日本の深層―縄文・蝦夷文化を探る (集英社文庫)
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